不動産屋の女
女なんてのは、なんのキッカケで豹変するかわからない。
初めて女性(ひと)に会ったのは、そう、たしか2年前ちょうど今頃だったかね。
今いるT大学、まぁ、ぶっちゃけるとT大学ってのは、筑波大学なんだけれど、
夏あたりにそこの編入試験になぜか合格しましてね。
今思えば採点ミスだとしか思えないのだけど、なぜか合格しましてね。
しかも、あれだからね、
試験日が一番早かったからという、とんでもない理由で受験を決めてたからね。
こんなおれが合格してごめんなさい。
で、合格したから、4月から住むアパートを探しに来たのね。
家を探さんがために、当時付き合ってた彼女と喜々として、
開通したばかりのTXに乗ってつくばの不動産屋にやってきたわけです。
そんで、くる前にネットである程度目星つけていた不動産屋に行ったのですが、
その女性(ひと)はそこの受付のお姉さんでした。
まぁね、彼女は一見どこにでもいそうな普通の女性でした。
今でも覚えていますが、グレーのスーツを着こなし、髪をボブ風のショートにまとめている、
ホントどこにでもいるような普通の女性。
だけど、彼女には人と一線を画しているというか、あきらかに異常な部分がありました。
いやね、声が異常に小ちゃいんですよ。
そりゃね、少しくらい声の小ちゃい人なんてのはゴロゴロいますわな。
世の中内気な人もいるでしょう。
でもね、彼女の声の小ちゃさっていったら、もうホントいかれてるくらいだった。
一瞬ね、自分の耳がいかれたのかと思いましたもん。
ドリフのコントのしむけんとミツ子さんみたいになってのかと思った。
そんくらいの勢いで、マジでミクロボイスだった。
もうね、マジ、滝川クリステル並に斜めって、もうハグかってくらいと接近しないと
何を言ってんのかわかりゃしない、これでよく採用になったな!?
とか思わず採用基準を疑いたくなった。
部屋を見せてくれい!
といっても、ボソボソとなにかいいながらファイル広げて示してくるお姉さん。
交渉にも一苦労です。
でも、まぁ、世の中言語が通じなくてコミュニケーションをとれる人もいるくらいですからね、
なんとか話をつけていくつか部屋を見せてくれることになったのですが、
なぜか、彼女が車で送迎してくれるとか言い出しましてね。
正直、いやいや、あんた車運転できんのかよ!って思った。
おれだってね、人を見かけで判断したくはないですよ、だけど、彼女はそれを超越するほど、
っていうか、声の小ちゃさと運転スキルはビタイチ関係ないのだけど、
それでも、おれは彼女の運転スキルを信用できなかった。
なにより、この人と車という密室で時間をともにする自信はなかった。
ってことでレンタルサイクルで部屋を見てまわったのでした。
で、まぁ、その結果今の、風呂の面積が通常の半分しかない上に
今だにドアノブに鍵穴がついてて、しかも向かいのアパートの一室が廃墟になってるよな
クソオンボロアパートに入居するはめになったのだけど、
まぁ、住めば都。
これから向こうも2年住みますよ。
その後は、家賃は振込だし、契約に行ったときもその人はいなかったので会うこともありませんでした。
でも、つい最近、実家から持ってきた車の駐車場を確保するのに
久しぶりにその不動産屋を訪れました。
で、そこで2年ぶりくらい彼女に再会したのですが、ハッキリ言って驚愕した。
もうね、肝っ玉が飛び出るかと思った。
いやね、もうね、めっちゃファンキーになってる。
グレーのスーツを来て、ボブ風のショートにしていた、清楚な彼女の面影はなく、
なんか、髪もモロンモロンと伸びていたし、茶髪だし、スーツのめっちゃ派手じゃないか。
あの、清楚の彼女はどこに行ってしまったのか、もうね、ビックリですよ!
それよりなにより、話方の豹変ぶりに驚愕した。
あんなにボソボソしゃべっていた彼女の姿はなく、チャキチャキとまるで江戸っこの如くシャベクリまくる彼女がいました。
いったい何が彼女をここまで変えたのか、おれの脳内を妄想がかけめぐります。
自己啓発セミナーでも行ったのか!?
それとも、あの時がおかしくて今のが本来の彼女の姿なのか!?
はたまた、実は双子の妹か!?
結局、原因は闇の中でしたが、彼女は豹変していました。
女なんてのは、なんのキッカケで豹変するかわからない。
